「海外の選手たちは、日本人以上に『一本』の美しさに憧れている。にもかかわらず、本家の日本が判定勝ちを狙う小さな柔道に走ってどうするのか」
大野の言葉には熱がこもる。エディンバラ大学での研究活動や現地指導を通じて、彼が目撃したのは、日本の伝統的な「組んで投げる」スタイルに対する世界的なリスペクトだった。欧州の若手選手たちは、大野の過去の試合映像をコマ送りで再生し、軸足の位置や組み手の細かな相殺技術を狂ったように研究していたという。
しかし、当の日本国内を見渡せば、国際ルールの変更や審判の傾向に過剰に適応しようとするあまり、指導の現場では「反則を取らせる技術」や「ポイントを守り切る時間稼ぎ」が横行している。大野はこの現状を「目先の勝利と引き換えに、柔道が持つ最大の魅力を自ら捨て去る行為」だと一蹴する。相手を力でねじ伏せるのではなく、理合いによって制する。その理想を追う姿勢こそが、結果として世界を凌駕する強さを生むのだと彼は確信している。