世界的なフードツーリズムの隆盛に伴い、旅行者が京都の夜に求める食体験のハードルはかつてないほど高くなった。その潮流を語る上で欠かせないのが、伝統的な枠組みを打ち破り、劇場型カウンター割烹で一時代を築いた「祇園さゝ木」の佐々木浩氏の存在である。
ミシュランガイド京都・大阪で最高峰の評価を獲得し続ける同氏の哲学は、弟子たちを通じて京都全域、さらには駅周辺の食空間にも確かな影響を及ぼしている。かつて「格式が高く閉鎖的」とされた京料理は、いまやオープンキッチンの躍動感や、国内外のゲストをもてなす柔軟なホスピタリティと融合した。
京都駅周辺でも、伝統的な懐石の作法を守りつつ、炭火焼きの手法を取り入れたりワインとのペアリングを提案したりする新世代の日本料理店が増加傾向にある。素材本来の輪郭を際立たせる繊細な引き算の美学。そこに現代的な軽やかさが加わった進化系京料理は、旅のハイライトにふさわしい満足感をもたらしてくれる。