NBAファイナルMVPの歴史の中で、唯一無二の例外として語り継がれるのが、賞が創設された初年度である1969年のジェリー・ウェスト(ロサンゼルス・レイカーズ)による受賞です。
この年のファイナルは、宿敵ボストン・セルティックスとレイカーズが第7戦までもつれ込む大激闘を展開しました。結果はセルティックスが勝利し優勝を果たしたものの、シリーズを通じて驚異的な活躍を見せたのが敗れたレイカーズのウェストでした。ウェストは7試合で平均37.9得点、7.4アシストを記録し、第7戦でも42得点・13リバウンド・12アシストのトリプルダブルを達成。圧倒的な支配力を前に、投票者たちは優勝チームではなく敗戦チームのエースに票を投じました。
しかし、ウェスト本人は後に「優勝を逃した以上、トロフィーをもらっても何の慰めにもならなかった」と回顧しています。この一件以降、半世紀以上にわたり「優勝チーム以外からの選出」は一度も起きていません。2015年にレブロン・ジェームズが圧倒的なスタッツを残しながら敗戦した際にも議論が巻き起こりましたが、最終的には優勝したウォリアーズのアンドレ・イグダーラが受賞しました。現在では「事実上、優勝チームのエースまたは最高殊勲者に贈られる賞」という暗黙のコンセンサスが確立しています。