この秘密部隊の存在が公の場で激しく追及された決定的な契機は、2013年11月の共同通信によるスクープ報道でした。共同通信の石井暁特別編集委員が長年の取材を基に、「陸上自衛隊の別班が、首相や防衛相に無断で海外に拠点を置き、秘密情報活動を行っている」と報じたのです。
当時の国会審議において、小野寺五典防衛大臣(当時)は以下のように答弁しました。
「陸上幕僚監部に『別班』と呼ばれる組織は過去にも現在にも存在しない。大臣である私にもそうした報告は一切上がっていない」
政府および防衛省は、一貫して組織の存在そのものを完全否定する公式見解を崩していません。しかし、この答弁は二重の深刻な問題を浮き彫りにしました。
もし報道が事実であり、大臣や首相すら把握していない組織が海外で独自に活動しているとすれば、日本国憲法が定める「文民統制(シビリアンコントロール)」の完全な破綻を意味します。一方で、長年防衛事務次官を務めた元高官や陸上幕僚長経験者、さらには元防衛庁長官の一部が、退任後の回顧録やオーラルヒストリーの中で「別班と呼ばれる特務チームの存在や活動について、内々に報告を受けていた」と示唆する証言を残しています。
「国家の安全保障上、公には絶対に認められないが、実質的には運用されてきた」というアンビバレントな二重構造こそが、戦後日本のインテリジェンスが抱え続けてきた最大の闇といえます。