店舗側があえて利用者にひと手間をかけさせる背景には、スーパー経営における切実な課題とコスト削減への強いこだわりがあります。導入理由の筆頭に挙げられるのが、ショッピングカートの放置防止です。
一般的な無料カートの場合、買い物を終えた利用者が自分の車のすぐ横や駐車枠の隅にカートを放置して立ち去ってしまうケースが後を絶ちません。放置されたカートが強風で動いて他人の車に衝突して傷をつけたり、駐車スペースを塞いで大渋滞を引き起こしたりするトラブルは、店舗にとって深刻なリスクでした。
もう一つの切実な理由が、ショッピングカートの盗難防止対策です。業務用の頑丈なショッピングカートは、1台あたり約1万5,000円〜3万円前後もする高価な店舗備品です。近隣の住宅街や駅前まで乗ったまま持ち去られ、そのまま放置されて回収不能になる被害を防ぐため、100円の心理的ハードルが大きな抑止力となっています。
さらに見逃せないのが、カート回収に伴う人件費の劇的な削減効果です。巨大な駐車場を持つ店舗では、放置されたカートを集めて回る専任スタッフを雇うだけで年間数百万円規模の人件費が発生します。100円デポジットによって利用者が自発的にカートを戻す環境を作ることで、その浮いたコストを「商品の販売価格の引き下げ」に直接還元できるのです。