「なぜ、客席を総立ちにさせるような大迫力の演奏が代表選考から漏れたのか」。この疑問を解き明かす鍵は、大会本部から開示された審査員講評と評価基準の記述にあります。
複数の審査員が共通して指摘していたのは、「ピアニッシモにおける音程と和声の純正さ」、そして「オーケストレーションの縦と横の線が崩れないテンポ感」でした。全日本吹奏楽連盟および東京都吹奏楽連盟の審査基準は近年、ブラスバンド的なパワープレイよりも、管弦楽的かつ室内楽的な精緻さを重視する傾向を一段と強めています。特にどりーむホール特有の音響特性において、フォルテッシモで管を過剰に鳴らしすぎると、直接音と反射音が干渉し合い、低音部の輪郭が濁ってコード進行の機能がマスキングされてしまいます。
現場で取材に応じた連盟関係者は、都大会代表校選考理由の根底にある審査員の共通認識について次のように明かしています。
「大音量で押し切るダイナミクスは一見華やかですが、ホールの音響を飽和させてしまい、ハーモニーの濁りが目立ちます。今年の審査団が一貫して注視したのは、スコアの構造を全員が理解し、指揮者に過度に依存せず自律的にブレンドを作れているかどうかでした。わずかな音程の揺らぎや、フレーズの語尾の雑な処理を見逃さない緻密な耳を持つ学校が、僅差の戦いを制したのです」