『HERO』を語る上で避けて通れないのが、ビデオリサーチの歴史に刻まれた驚異的な視聴率データです。初回33.4%で鮮烈なスタートを切ると、一度も数字を落とすことなく第8話では36.8%、全11話の平均視聴率は34.3%(いずれも関東地区・世帯)を記録しました。民放の連続ドラマにおいて「全話30%超え」を成し遂げた作品は、日本のテレビ史上で本作のみです。
当時、この数字がいかに異次元であったかは、2000年代初頭のテレビ界の基準と比較しても一目瞭然です。
では、なぜこれほどの数字を叩き出すことができたのか。最大の要因は、「従来の法廷ドラマの常識を覆す脱構築」と「極上のアンサンブル劇」の融合にありました。
検察官といえば、黒いスーツに身を包み、冷徹に容疑者を尋問する堅苦しいエリートというのが当時のパブリックイメージでした。しかし、久利生公平は中卒で元不良、大検を経て司法試験を突破した異色の経歴を持ち、常にラフな私服姿。事件の大小にかかわらず「現場へ足を運び、自分の目で確かめる」という徹底した現場主義を貫きます。
この泥臭いまでの真摯さが、当時のバブル崩壊後の閉塞感に苛まれていた視聴者の心を捉えました。脚本を手掛けた福田靖氏らの緻密なプロットは、司法組織の内部力学を描きつつも、重厚なサスペンスをワンシチュエーション・コメディのような軽妙な会話劇へと昇華させました。さらに、宇多田ヒカルによる主題歌「Can You Keep A Secret?」がミリオンセラーを記録するなど、ポップカルチャーの潮流とも完全にリンクしていたのです。