『握手』の作中で、最も深い余韻を残すのがルロイ修道士の見せる独特なジェスチャーや行動だ。両手の親指を立てて交差させる仕草や、痛みを隠すように固く握りしめる手。これらは単なる個人的な癖ではない。
指言葉の第一の意味は、言葉を超えた強い意志と愛情の伝達だ。かつて児童養護施設で暮らした「私」に対し、ルロイ修道士はいつでも「しっかりおやり」と無言のエールを送り続けていた。指を立てる動作は、自立した人間として生きていけという厳しくも温かい教えの象徴である。
さらに見逃せないのが、自分の病状や身体の衰えを「私」に悟らせまいとする振る舞いだ。激しい痛みに耐えながらも笑顔を絶やさず、作業の手を止めない姿勢。そこには他者に心配をかけず、己の使命を最期まで全うしようとする修道士としての誇りと深い慈愛が溢れている。