「赤色と緑色を混ぜ合わせる」という同一の行為でありながら、物質と光で発色が異なる背景には、物理学における「加法混色(Additive Color Mixing)」と「減法混色(Subtractive Color Mixing)」という2つの根本原理が存在します。
まず、私たちが普段スマートフォンの画面やパソコンモニターで見ているデジタル画像、あるいは舞台照明などは「光の三原色(赤・緑・青=RGB)」をベースとした加法混色です。波長約630nmの赤色光と波長約530nmの緑色光が同時に人間の網膜へ届くと、視細胞(L錐体とM錐体)が同時に刺激されます。この神経伝達信号を脳が統合処理することで、人間は「鮮やかな黄色(波長約580nm相当)」として知覚します。光は重ねるほどエネルギーが加算され、明るさが増していくため、最終的にRGBすべてを混ぜ合わせると「白色光」へと至ります。
一方で、アクリル絵の具、水彩絵の具、油絵の具、印刷インクなどの物質を混ぜる場合は、全く逆の現象が起きます。物体色は「光の吸収と反射」によって決まります。赤い絵の具は緑や青の光を吸収して赤を反射し、緑の絵の具は赤や青の光を吸収して緑を反射しています。この2つの顔料を混ぜ合わせると、「互いが反射するはずだった光の波長を互いに吸収し合う」という減法混色のプロセスが働きます。結果として反射光の量が大幅に減少し、明度と彩度が著しく低下して「暗い茶色」や「黒褐色」に沈むのです。