日高のり子が「演じたキャラ」を年代別に並べると、日本アニメの変遷がそのまま浮かび上がる。まず外せないのが、1985年放送開始の「タッチ」浅倉南。あだち充原作の青春野球漫画をアニメ化した本作は、平均視聴率20%超を記録した国民的アニメだ。浅倉南は「国民的ヒロイン」として社会現象となり、日高のり子の声は“理想の隣の女の子”として日本中に刻み込まれた。当時のインタビューで彼女は「南ちゃんは、私にとって“演じる”ではなく“そこにいる”感覚に近かった」と語っており、子役時代に培った自然体の演技が、そのままヒロイン像に重なったことがうかがえる。
その5年後、1990年には「ふしぎの海のナディア」で主人公・ジャンを演じた。庵野秀明監督が手掛けた本作は、後に「エヴァンゲリオン」へと続く布石となった作品だ。日高はこの作品で“少年役”に初めて本格挑戦。好奇心旺盛で正義感の強い少年の声を、無理のないトーンで演じ分けた。この経験が、後に「忍たま乱太郎」の猪名寺乱太郎役(1993年〜)へとつながっていく。乱太郎は放送開始から30年以上、一度もキャストが変わっていない。これは日本のテレビアニメにおける極めて異例な記録であり、彼女の声がもはや“乱太郎そのもの”として世代を超えて定着している証左だ。
そして1995年、日本アニメ史の転換点となった「新世紀エヴァンゲリオン」。惣流・アスカ・ラングレー役は、浅倉南とは対極に位置するキャラクターだった。高飛車で勝ち気、しかし内面に深い傷を抱える14歳の少女。日高はこの複雑な役柄を、時に叫び、時に囁くように演じ分け、アスカの精神崩壊と再生を声だけで表現した。特にテレビ版第22話「せめて、人間らしく」でのアスカの絶叫シーンは、声優史に残る名演として今も語り継がれている。