地域住民の憩いの場として定着していた「天然温泉みきの湯」が、なぜ撤退という苦渋の決断を下さざるを得なかったのか。その背景には、単一の要因にとどまらない複数の経営的課題が絡み合っていました。
第1の要因は、温泉設備やボイラーなど中枢インフラの深刻な老朽化です。オープンから長年が経過し、地下1,500メートルから汲み上げるポンプ設備や配管系統、各種温浴設備のメンテナンス費用は年々増大していました。これらを全面的に更新するためには億単位の設備投資が必要となり、事業継続の上で重い足かせとなっていたのです。
第2に、感染症流行期における集客打撃と生活様式の変容が挙げられます。特にみきの湯の大きな強みであった「大衆演劇の公演」や「大宴会場での飲食」といった密を生みやすいエンタメ部門が長期の自粛や制限を余儀なくされ、施設全体の収益モデルが大きく崩れてしまいました。
そして第3に、原油・電気・ガスをはじめとするエネルギーコストの急騰です。巨大な浴槽を沸かし続け、広大な館内の空調を維持するスーパー銭湯業態にとって、光熱費の高騰はダイレクトに利益を圧迫します。これらの三重苦が重なった結果、2026年10月31日の営業をもって完全閉館という判断が下されました。