アヴァンギャルドな挑戦者としての顔を持つ一方で、彼女はお茶の間の空気感をも支配した。ソフトバンクの長期CMシリーズ「白戸家」のお母さん役は、その最たる例だろう。犬のお父さんや個性派揃いの家族を飄々とまとめ上げる姿は、2000年代以降の日本の家庭像に新たな温もりとユーモアを提示した。
また、重厚な演技者としての実力を決定づけたのが、2008年のNHK大河ドラマ『篤姫』である。主人公・篤姫の母・お幸を演じた彼女の演技は、武家の厳格さと母性的な温情を完璧なバランスで宿しており、今なお大河ドラマ史上の名演として語り継がれている。軽妙なコメディから格式高い歴史劇まで、淀みなく演じ分ける表現の幅広さは圧巻のひと言に尽きる。