今日に至る山下清のパブリックイメージを決定づけたのは、間違いなくテレビドラマ業界が世に送り出した金字塔『裸の大将放浪記』である。フジテレビジョン系列で長期にわたり放送されたこのシリーズにおいて、俳優・芦屋雁之助が見せた熱演は、清のキャラクターをお茶の間の愛されキャラへと完全に昇華させた。
雁之助が演じた「お人好しで少し抜けているが、行く先々で心温まる絵を描いては人々の悩みを解決して去っていく旅人」という造形。これは高度経済成長期を経て失われつつあった日本の原風景や人情へのノスタルジアと見事に合致した。しかし、実在の清を知る関係者の証言を掘り起こせば、その人物像ははるかに複雑で、鋭利な知性と現実感覚を併せ持つ特異なリアリストだったことがわかる。