言葉の形こそ変化したものの、なぜ「バブみ」という概念はこれほどまでに人々の心を捉え続けるのでしょうか。そこには臨床心理学および社会心理学における明確なメカニズムが存在します。
第一に、原義である「バブみを感じて甘えたい」という男性心理の深層には、精神分析学者ジークムント・フロイトが提唱した「退行(Regression)」という防衛機制が働いています。成果主義や社会的責任、絶え間ない情報過多に晒される環境下で、成人男性が「弱音を吐くこと」は社会規範上依然として抑圧されがちです。その結果、無条件ですべてを受け入れてくれる架空の母性やキャラクターの包容力にすがり、精神のバランスを回復しようとする無意識のシェルターとして「バブみ」が機能します。これはカール・ロジャーズが提唱した「無条件の肯定的配慮(Unconditional Positive Regard)」を求める渇望とも合致するものです。
第二に、現代の若者言葉における「バブみのある推しを愛でる」心理には、動物行動学者コンラート・ローレンツが定義した「ベビースキーマ(Baby Schema)」が関与しています。丸みのある輪郭、大きな瞳、ぎこちない動作といった乳幼児特有の特徴は、人間の脳内でオキシトシン(愛着ホルモン)の分泌を促し、生得的な保護本能・ケア欲求を刺激します。アイドルファンが「実質私が産んだ」「バブくて愛おしい」と表現する背景には、対象を保護・育成する感覚を擬似体験することで得られる強固な精神的充足感があるのです。