大瀧詠一の代名詞である「ナイアガラ・サウンド」。それは、何重にも重ねられた楽器の音と、独特のリバーブ(残響)が織りなす、分厚くも透明感のある音響世界だ。パソコン一台で音楽が作れる現代のDTM(デスクトップミュージック)世代の若手プロデューサーたちにとって、この職人技とも言える音作りは驚異の対象でしかない。
ある若手トラックメーカーは、「今のプラグインでは再現できない、空気の振動そのものが録音されている」と驚きを隠さない。スタジオの壁の反射音まで計算し尽くしたとされる大瀧のレコーディング手法は、AIによる自動作曲や安易なプリセット音源に対する、強烈なカウンターカルチャーとして機能している。