この分野に革命をもたらした第一人者が、ノーベル生理学・医学賞を受賞したスヴァンテ・ペーボ博士だ。考古学的な常識では「数万年前の骨からDNAを抽出することなど不可能」とされていた時代に、彼は粘り強い実験を重ね、古代DNA研究の扉をこじ開けた。
彼が率いるマックス・プランク進化人類学研究所の研究チームは、過酷な環境下で風化した骨粉から不純物を取り除き、ネアンデルタール人の全ゲノム解読という偉業を成し遂げた。その結果判明したのは、アフリカ以外の地域に生きる現代人のゲノムに、今なお1〜2%のネアンデルタール人由来の遺伝子が生き残っているという事実だった。彼らの情熱と先進的な解析環境がなければ、人類の起源を巡るドラマは今も闇の中に包まれていたに違いない。