しかし、プロジェクトは順風満帆ではない。最大の障壁となっているのが、大井川の水資源や南アルプスの環境保全を巡る静岡県との協議だ。2026年現在、知事交代や度重なる有識者会議を経て、ようやく環境対策の具体策がまとまりつつあるものの、失われた時間は小さくない。工事関係者の間では、「実質的な部分開業や、さらなる工期圧縮の技術的ブレイクスルーがなければ、2030年代初頭の全線開業すら危うい」との冷ややかな見方もある。
JR東海は地元の懸念を払拭するため、トンネル湧水の全量戻しや生態系への影響モニタリングなど、前例のない規模の環境保全策を提示している。対立から協調へ。この巨大インフラを国家の共有財産としてどう育てるか、政治と技術の知恵が今まさに試されている。