連載初期の誌面を開くと、誰もがその姿に驚きを隠せないはずだ。小学館の学年別学習雑誌(『よいこ』『幼稚園』『小学一年生』〜『小学四年生』)で同時に連載が始まった『ドラえもん』は、当初ターゲット層に合わせて頭身や顔つきが細かく描き分けられていた。低学年向け誌面ではより愛らしくコミカルに、高学年向けではSFの妙味が際立つシャープな表情にと、緻密な工夫が凝らされていたのだ。
当時の貴重なカラー原画を観察すると、現在の明るい水色とは異なる、深みのある濃い青や朱色に近い赤が多用されていたことがわかる。アナログの絵の具で丁寧に塗られたグラデーションや、印刷の微妙なインクのブレすらも、味として作品の魅力を高めていた。初期の青タヌキ(本人は猫型ロボットと主張するが)は、体が現在よりも一回り大きく、足の長さも極端に短い。どこか間抜けていて親しみやすいドタバタ劇の主人公として描かれていたのだ。
連載開始当初、藤子・F・不二雄はキャラクターの造形について「子どもたちが壁やノートに簡単に落書きできるシンプルな丸の組み合わせ」を意識していた。しかし、初期の原稿では胴体の厚みやヒゲの位置、首輪の鈴の大きさがコマごとに微妙に異なっており、その不均一さこそが手描き漫画黄金期の圧倒的なライブ感を伝えている。