木下サーカスの魅力を語る上で欠かせないのが、あの巨大な赤いテントの存在だ。数日前までただの空き地だった場所に、突如として巨大な劇場が出現し、数か月後には綺麗さっぱり消え去る。この刹那的な「移動劇場」の仕組みそのものが、一つの完成されたアートと言っていい。
何百本もの巨大な鉄柱を立ち上げ、強風や大雨に耐えうる巨大キャンバスを張り巡らせる。この設営と解体を支えるのは、長年培われてきた職人たちの圧倒的なロジスティクスと手腕だ。設営現場に漂う重機の音と職人たちの威勢の良い掛け声は、興行が始まる前のもう一つの熱いドラマである。