本作が単なる性愛小説と一線を画している理由は、官能の描写が主人公・奈津の「自己肯定」と「魂の解放」を果たすための切実なプロセスとして描かれている点にある。脚本家としての成功と引き換えに、夫からのモラルハラスメントに息をひそめていた奈津。彼女が求めたのは、単なる不倫のスリルではない。誰の所有物でもない、自分自身の人生を取り戻すための闘いだったのだ。
劇中で描かれる複数の男性との官能的な関係は、一見すると無軌道な逃避行のように映るかもしれない。しかし、その根底にあるのは「自分を他者に明け渡さない」という切烈な決意だ。過激な愛執の果てに奈津が辿り着いた境地、それこそが現代人が見失いがちな真の自由の姿と言える。