村田由香里という人物の底知れなさは、その異色の経歴にこそある。現役引退後、日本テニス協会の強化担当や育成現場で手腕を振るい、国内の若い才能を世界へと送り出してきた。その情熱的な指導と緻密な戦術理論は、やがて国際テニス連盟(ITF)の国際的なプロジェクトでも高く評価されることとなる。
現場を知り尽くした指導者であり、世界標準の組織構造を熟知するネゴシエーターでもある。この二つの顔を持つからこそ、作品に圧倒的なリアリティと説得力が宿った。単なる部外者の取材班では決して踏み込めないロビー活動や選手間の心理戦を、彼女の緻密な証言が見事に紐解いている。