大西伸明の作品がアートコレクターや美術館学芸員、そして一般の観客まで幅広く魅了し続ける理由はどこにあるのでしょうか。その最大の鍵は「身体性を伴う謎解き体験」にあります。
美術鑑賞の多くは、作品から離れた位置で視覚情報のみを受け取る受動的な行為になりがちです。しかし、大西の作品を目にした人間は、ほぼ例外なく自ら歩み寄り、角度を変え、かがみ込み、息をのんで観察し始めます。視覚の違和感を解消するために、全身の感覚器官を総動員して作品に対峙せざるを得なくなるのです。
このアクティブな鑑賞体験は、快感と困惑を同時に生み出します。「騙された」という驚きは、やがて「自分が普段いかに適当に世界を見ているか」という深い自己省察へと変化します。芸術が思考の触媒として機能する見事な例と言えます。