結論から明かせば、ドラマ『海に眠るダイヤモンド』は実在の記録をそのまま映像化したドキュメンタリーではなく、脚本家・野木亜紀子氏が綿密な現地取材と歴史考証を重ねて書き下ろした完全オリジナル脚本です。原作となる小説やコミックは存在せず、日曜劇場における完全オリジナル作品として制作されました。
演出の塚原あゆ子氏、プロデューサーの新井順子氏という数々の名作を世に送り出してきた制作陣が本作で試みたのは、「完全な創作劇(フィクション)」を「圧倒的な史実のリアル(ノンフィクションの土台)」の上に成立させる試みでした。登場する主人公の荒木鉄平や幼馴染の百合子、朝子、賢将、そして謎の女性リナといった人物の愛憎劇や人生の軌跡は創作ですが、彼らが呼吸していた端島の空気感、炭鉱事故の恐怖、そして1974年に迎える閉山へのカウントダウンは、すべて歴史的事実に基づいています。
制作にあたってスタッフ陣は、長崎市や端島炭鉱の関係者、元島民で構成される保存会への丹念な聞き取りを実施。当時の生活記録映像や三菱鉱業の社史、公的な行政記録を徹底的に洗い出しました。完全なフィクションでありながら「実話ではないか」と錯覚させる最大の理由は、細部に至るまで妥協なく再現された歴史的リアリズムにあります。