高橋まつりさんの死は、一企業の不祥事にとどまらず、国政を大きく動かしました。従来、日本の労働法廷においては、36協定さえ結べば実質青天井で残業させることが可能だった構造的な欠陥が白日の下に晒されたからです。
この事件を契機として議論が一気に加速し、2018年に成立したのが「働き方改革関連法」です。同法により、日本の労働法制史上初めて「残業時間の上限規制(原則月45時間・年360時間、繁忙期でも単月100時間未満・複数月平均80時間以内)」が罰則付きで義務付けられました。
「電通事件」がなければ、これほど強力な法的拘束力を持つ規制の導入はさらに年月を要していたはずです。まつりさんの犠牲は、日本企業全体の長時間労働是正へ向けた歴史的なパラダイムシフトを引き起こしました。