土俵上の絶対的王者として昭和の時代を席巻した大横綱・大鵬。その家庭環境は、常に厳格な勝負の世界と隣り合わせだった。しかし一方で、家庭内には文化や芸術を尊ぶ自由で豊かな雰囲気が満ちていたという。大鵬の三女・納谷美絵子氏を巡るエピソードの中で、しばしば語られるのが「宝塚」との精神的な近しさだ。
宝塚歌劇団が解き放つ眩いばかりの華やかさと、極限まで鍛錬された美学。それは、厳格な規律と伝統が支配する相撲界の美学と、どこか深い部分で共鳴していた。関係者によると、大鵬ファミリーは古くから舞台鑑賞を好み、第一線の表現者たちが放つ熱量に深いリスペクトを払っていた。メディアで表立って報じられることは少なかったものの、一族の心の中には常に「本物の芸」に対する羨望と共感が存在していたのだ。