ワゴン販売の廃止がもたらした最大の副産物は、車内の「静寂」だ。かつては狭い通路をワゴンが通り抜けるたびに足元に気を配り、アテンダントの呼びかけの声が常に響いていた。現在、車内は驚くほど静かだ。ノートPCを開いてリモートワークに没頭するビジネスパーソンにとってみれば、集中を妨げられない環境は大きなメリットとして享受されている。
しかし、効率化の裏で失われたものを惜しむ声もゼロではない。「旅先でふと思いついてお菓子を買うような、偶然の出会いがなくなった」というベテラン旅人の呟きも耳にする。効率と利便性を突き詰めた結果、新幹線は「情緒を楽しむ空間」から「移動するオフィス・リビング」へとその性格を急速に変容させた。