迫力あるアクションシーンは、単に速く激しく動けば作れるものではない。葛本康彰の振り付けには、論理的な設計思想が貫かれている。彼の殺陣における最大の特長は「リアリティと映像的誇張の絶妙な黄金比」だ。
あまりに現実的な戦闘は、時として画面上で地味に見えてしまう。逆に過度な演出は、リアリティを損ない観客を白けさせる。葛本はこの両極の狭間で、常に最適な解を導き出す。相手との距離感(間合い)、呼吸の合わせ方、カメラが捉えるベストな角度をミリ単位で割り出し、現場で役者やスタントマンへ正確に伝達する。
骨格と重心を見極める身体メカニクス
葛本が主導するアクション指導では、演者の骨格や筋力に応じた動きの最適化が行われる。運動神経の異なる俳優陣に対し、無理な型を強要するのではなく、その人物が最も魅力的に見える軌道を切り取る。結果として、アクション初挑戦の主演俳優であっても、画面上では長年訓練を積んだ達人のように躍動するのだ。