「ご冥福をお祈りします」という表現を正しく使い分けるためには、まず漢字の意味と宗教的なルーツを把握することが欠かせません。「冥福(めいふく)」の「冥」は、冥府や冥界といった「死後の暗い世界」「死者が彷徨う死後の旅路」を指します。そして「福」は幸福を意味するため、冥福とは文字通り「死後の暗闇の世界で迷わず、無事に成仏して幸せになってほしい」と祈ることを指します。
仏教の一般的な教義(追善供養を重視する宗派)では、人間が亡くなると四十九日までの間、冥土の険しい道のりを歩みながら審判を受けると考えられています。残された遺族や知人が現世から祈りを捧げること(追善)によって、故人がより良い来世へ転生できるよう後押しをする――これが「冥福を祈る」という行為の本来の成り立ちです。
ここで極めて重要なのは、「冥福を祈る」対象はあくまで亡くなった故人本人であるという点です。通夜や葬儀の席で遺族に向かって直接「ご冥福をお祈りします」と声をかけるのは、文法構造上「あなた(遺族)が冥土で幸せになることを祈る」という意味に誤読されかねず、本来の敬語法としても不自然であると専門家の間でも指摘されています。