2000年代初頭、山崎は中央教育審議会の会長を務め、混迷を極める日本の教育改革の舵取りを担った。彼が一貫して訴えたのは、知識の詰め込みでも、単なる放任でもない「生きる力」としての教養と美意識の重要性だ。
人間が社会で自立し、他者と意味のある対話を交わすためには、論理的な思考力だけでなく、芸術や歴史への深い感受性が不可欠である――。山崎が打ち出した政策提言の根底には、豊かな市民社会を支えるのは成熟した「個」であるという確固たる信念があった。制度疲労を起こしつつあった公教育の現場に、人間性の回復という哲学的な骨骨を打ち込もうとした試みは、教育の本質が問われる現代にこそ見直されるべきだろう。