タイトルを構成する「紅蓮」と「蓮華」には、それぞれ重厚な文化的・宗教的背景が存在します。この2つの言葉が結びつくことで、『鬼滅の刃』の物語と極めて美しくシンクロする構造が完成しています。
まず「紅蓮(ぐれん)」は、仏教における地獄思想の一つである「八寒地獄(はっかんじごく)」の第7層「紅蓮地獄(ぐれんじごく/サンスクリット語:鉢特摩・パドマ)」に由来します。極限の寒さによって皮膚や肉が裂け、吹き出す血によって全身が真っ赤な蓮の花のようになる様を表したものです。ここから転じて、赤く燃え盛る激しい炎の色を「紅蓮の炎」と呼ぶようになりました。
一方で「蓮華(れんげ)」は、泥水の中から茎を伸ばし、泥に染まることなく清らかな花を水面に咲かせる水生植物(ハス)を指します。仏教では「泥中の蓮(でいちゅうのはす)」として、過酷で汚れた現世にあっても清く気高く生きる仏の慈悲や悟りの象徴とされてきました。
すなわち『紅蓮華』とは、「地獄のような過酷な苦痛や悲惨な運命(紅蓮)に呑まれながらも、傷だらけになって咲き誇る一輪の花(蓮華)」という意味を持ちます。家族を鬼に惨殺され、鬼と化した妹・禰豆子を救うために血を流しながら刀を振るう主人公・竈門炭治郎の生き様そのものを表した、極めて精緻な命名です。