「大丈夫」という日本語の訳語は使い勝手が良い反面、この言葉が持つ絶妙なニュアンスを覆い隠してしまうことがある。現地で使われる「ケンチャナ」には、大きく分けて3つのニュアンスが存在する。
第一に「心配無用・問題なし」という客観的な状況説明だ。転んだ相手に対して「平気?」と尋ねる場面や、提案に対して「それで結構です」と答える際の使われ方である。第二に「気にするな・構わないよ」という許容と寛容の表現。誰かが失敗した時に、その罪悪感を和らげるために投げかける温かい言葉だ。そして第三が、自らの不安を押し殺して発する「私は平気だから」という自己暗示や強がりのニュアンスだ。
韓国語のニュアンスに詳しい専門家は、「この3つ目の強がりのニュアンスこそが、ドラマや映画で視聴者の涙を誘うトリガーになる」と指摘する。表向きは笑顔を見せながら声のトーンを落として呟く一言には、直訳の『大丈夫』では表現しきれない切なさが宿っているのだ。