皮膚がん治療の現場で医師たちが口を揃えるのは、「患者の多くが初期段階で受診を先送りにしてしまう」という現実です。実際にメラノーマと診断された患者の手記や医療機関の症例報告には、痛切な反省が共通して綴られています。
「50代の男性患者は、足の裏にできた黒いアザを『靴擦れの血豆が固まったもの』と思い込み、1年以上放置していました。しかし、徐々にアザが広がり、入浴後にタオルへ血液が付着するようになって初めて皮膚科を訪れました。診断結果はすでに真皮深層まで浸潤した進行期メラノーマでした。手術後の手記には『まさか足の裏にがんができるとは思わなかった。痛みも痒みもなかったから完全に油断していた』と記されています。」
ネット上のコミュニティ(SNSや知恵袋など)でも、「親の足裏のほくろが大きくなっていたが、本人が病院嫌いで連れて行くのが遅れた」「爪の黒い筋をネイルサロンで隠していたら悪性だった」といった投稿が散見されます。皮膚がんは内臓のがんと違って「肉眼で直接見える」病気であるにもかかわらず、「痛みがない=安全」という思い込み(正常性バイアス)が、受診を遅らせる最大の障壁となっているのです。