劇中ではエモーショナルに描写された戦中・戦後の生活だが、現実の三淵嘉子を襲った悲劇は、言葉を失うほど惨烈なものだった。戦争末期、夫の和田芳夫が大日本帝国陸軍に召集され、中国大陸で病死。さらに追い打ちをかけるように、長年彼女の精神的支柱であった両親も相次いでこの世を去った。
幼い一人息子の芳利を抱え、文字通り着の身着のままで終戦を迎えた嘉子。一時は実家の財産も失い、過酷な闇市とハイパーインフレの嵐の中で食いつなぐ日々を余儀なくされた。悲しみに暮れる暇すらなく、生きるために奔走した日々。その凄惨な体験こそが、後に彼女を「法による救済」へと強く駆り立てる原動力となった。
戦後、彼女は裁判官の三淵乾太郎と再婚する。連れ子のいる同士の再婚であり、家庭内での摩擦や葛藤も少なくなかったという。ドラマではマイルドに表現された家族関係だが、実際には互いの連れ子への接し方や家計のやりくり、超多忙な仕事との両立など、血の滲むような努力と葛藤の連続だった。完璧な聖人君子ではなく、悩みながらも必死に家族を守り抜こうとした等身大の女性の姿がそこにはあった。