ステロイドパルス療法の副作用は、投与直後から現れる「急性期症状」と、退院後に続く後療法(内服治療)の過程で問題となる「亜急性・慢性期症状」に明確に分かれます。
急性期:不眠・精神症状・味覚異常
点滴投与中から直後にかけて最も高頻度で見られるのが、不眠と精神症状です。中枢神経系への直接作用により、「頭が冴え渡って一睡もできない」「異常に気分が高揚して活動的になる(軽躁状態)」、あるいは逆に「激しい焦燥感や不安感、抑うつ」が生じます。これは「ステロイド精神病」の初期兆候として知られており、一時的な脳内神経伝達物質の撹乱によるものです。症状が強い場合は、無理に我慢せず主治医に睡眠導入剤や抗不安薬の処方を依頼することが重要です。また、点滴中に口の中に独特の苦味や金属臭を感じる味覚変化も頻発しますが、点滴終了とともに消失します。
亜急性期〜慢性期:ムーンフェイスの期間と外見変化
多くの患者が懸念するムーンフェイス(満月様顔貌)や中心性肥満ですが、ステロイドパルス療法単独(3日間の投与のみ)であれば、脂肪再沈着が完成する前に血中濃度が低下するため、重度のムーンフェイスが生じるリスクは極めて低いです。顔の丸みが顕著になるのは、パルス療法後にステロイド内服薬(プレドニゾロンなど)を数週間〜数ヶ月にわたって高用量で継続する場合です。内服投与量が1日10mg〜15mg以下に減量されると自然に引き始め、減量・中止後2ヶ月〜6ヶ月程度で元の状態に完全回復します。
リバウンド(離脱症状)と副腎不全の予防
大量のステロイドが体外から入ると、自前の副腎皮質ホルモン分泌機能が一時的に休眠状態に陥ります。このタイミングで治療を急激に中止すると、病気の再燃(リバウンド)だけでなく、血圧低下、激しい全身倦怠感、関節痛、発熱などを引き起こす「急性副腎不全」という危険な状態を招きます。そのため、パルス終了後は内服ステロイドを用いて時間をかけて徐々に薬を減らす「テーパリング」がプロトコルとして厳格に定められています。