Appleの最高経営責任者(CEO)であるティム・クックは、長年にわたり「物理的な財布を過去の遺物にする」というビジョンを掲げてきた。その戦略の要石がApple WalletとApple Payの拡張だ。
しかし、物理的なプラスチックカードに対するスマートフォンの弱点が「電源依存」であることは、フィンテック業界全体にとっても長年の課題であった。欧米圏で主流のEMV Contactless(タッチ決済)に比べ、日本のFeliCaをベースにした高速度決済インフラは、1回の処理をわずか0.1秒以下でこなす必要がある。
電源オフ状態での決済精度向上は、単なる利便性の追求にとどまらない。災害時の停電や非常事態において、移動手段や物資購入の生命線を維持するための防犯・防災インフラとしての側面を強めている。フィンテック業界の次世代規格では、完全にゼロ電磁状態であってもメッシュネットワーク経由で決済を担保する研究が進められており、ハードウェアと金融サービスの境界線はさらに曖昧になりつつある。