生ハム原木を扱う上で、味わいを決定づける最大の要素が「切り方」である。どんなに高級な肉であっても、厚切りにしてしまっては硬さが前面に出てしまい、本来の旨味が台なしになる。
原木を固定するためには、専用の台座であるハモネロが不可欠だ。ガタつきのない頑丈なハモネロに脚をしっかりと固定することが、安全かつ綺麗なカットの第一歩となる。そしてカットに使用するのが、しなやかにしなる長身の専用ナイフクチージョだ。
世界最高峰の生ハムカット職人(コルタドール)として知られるフロレンシオ・サンチドリアン氏は、「生ハムを切る行為は単なる作業ではなく、肉の生命を表現する儀式だ」と語る。彼のようなプロの技に近づくコツは、力を入れずにクチージョの刃全体をバイオリンの弓のようにスライドさせること。向こう側が透けて見えるほど薄く、切断面が平らになるよう一定の角度を保ちながら引くことで、口に入れた瞬間に脂がとろける至高の食感が生まれる。