歴史を少し振り返ってみよう。2000年代初頭から「千と千尋の神隠し」のモデルではないかと噂されてきた九份。しかし、公式には江戸東京建物園や道後温泉などがモチーフとして挙げられており、台湾の九份については公式に否定されている。ではなぜ、これほどまでに説得力を持って語り継がれているのだろうか。
理由は、この街が持つ独特の多層的な歴史にある。日本統治時代の建造物が残り、その後に台湾独特の生活文化が積み重なった。異国情緒とどこか懐かしい和のテイストが混ざり合った独特のカオス感。それこそが、宮崎アニメが持つ「どこにもないけれど、どこかにある懐かしい世界」の空気感と完全に同期しているのだ。噂は都市伝説かもしれない。だが、旅人が現地で受け取る感動は紛れもない本物だ。