ハリウッド史上、最も劇的なカムバックを果たした男といえば、ロバート・ダウニー・Jr.を置いて他にない。1990年代後半から2000年代初頭にかけての薬物スキャンダルと度重なる逮捕劇は、かつて天才若手俳優と称えられた彼のキャリアを事実上の破滅へと追い込んだ。保険会社が契約を拒否し、スタジオ関係者が誰一人として受話器を取らなかった時代、彼の市場価値は完全に底をついていた。
しかし、彼は壊滅したキャリアを放置しなかった。インディペンデント映画での地道な役作りから信頼を再構築し、マーベル・シネマティック・ユニバースの『アイアンマン』で全世界の頂点へと上り詰める。さらに圧巻だったのは、その後のキャリア選択だ。巨大フランチャイズの看板を脱ぎ捨て、クリストファー・ノーラン監督の歴史的傑作『オッペンハイマー』で演じた陰湿な官僚ルイス・ストローズ役により、アカデミー賞助演男優賞を受賞。屈辱の時期に培われた人間観察の深さと陰影が、彼を単なるマネーメイキング・スターから不世出の名優へと昇華させたのだ。