木から摘み取られたラグビーボール状の果実(ポッド)の中には、白い果肉(パルプ)に包まれた種子がぎっしりと詰まっている。ここから極上の味わいを生み出すための長い旅が始まる。
第一の鍵を握るのが「発酵と焙煎」だ。農園で収穫された豆は、木箱に入れられて数日間の発酵プロセスに入る。パルプの糖分を餌に野生の酵母や酢酸菌が働き、強烈な熱を発する。この段階で、フルーティーな香りの素となるアミノ酸や有機酸が生み出されるのだ。発酵が不十分であれば単に渋く平坦な味になり、過剰であれば不快な腐敗臭が漂う。まさに紙一重の職人技と言える。
乾燥を経て工場へ運ばれた豆は、続いて焙煎(ロースト)の工程に回される。ここでの温度管理が銘柄の運命を決める。浅煎りでフルーティーな酸味を強調するのか、深煎りで香ばしいコクを引き出すのか。微小な温度変化がアロマの化学反応を左右する。その後、皮を取り除いた「ニブ」を破砕・すり潰し、滑らかなペースト状(カカオマス)へと変貌させていく。