では、なぜ「了解しました=マナー違反」という言説がここまで社会に浸透したのか。原因の一端は、平成期以降に拡大を遂げたビジネス教育業界の構造にある。
文化庁が平成19年に答申した「敬語の指針」は、敬語を尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ・丁寧語・美化語の5分類に整理した。この指針の中で「了解しました」を禁止ワードとして指定している事実はない。指針が呼びかけたのは、あくまで文脈に応じた適切な敬語の選択だ。
変化の引き金となったのは、日本マナー・プロトコール協会や各民間団体、ならびにビジネスマナー実務検定などの教材だ。検定試験や企業研修において「分かりやすい〇×形式」のテキストが好用された結果、「了解しました=NG」という単純化されたルールが拡散した。マナーの落とし穴は、まさにこの過度な形式主義の中に潜んでいる。