嬉野温泉街の情緒ある街並みを歩き、鳥居をくぐると厳かな空気が漂う豊玉姫神社の境内へ入ります。主祭神として祀られているのは、海の神(大綿津見神)の娘であり、神武天皇の祖母にあたる豊玉姫命(トヨタマヒメノミコト)です。日本神話において類まれな美貌の持ち主として描かれるこの女神は、古来より「美の象徴」として崇められてきました。
神社の社伝や歴史資料によると、創建の年代は定かではないものの、嬉野温泉の発祥とともに水神・温泉の守護神として地域住民に深く敬われてきた歴史があります。境内に足を踏み入れた瞬間に目を奪われるのが、社殿のすぐ傍らに鎮座する陶器製の巨大な白像、すなわち「白なまず様(なまず社)」です。
古くから嬉野の地では、なまずが豊玉姫命のお使い(神使)とされ、清流・嬉野川の主として皮膚病の平癒や美肌をもたらす神聖な生き物として保護されてきました。白くなめらかな体表を持つなまずにあやかり、「肌の病を治し、白く美しい肌を授ける」という民間信仰が、嬉野の良質な重曹泉(炭酸水素塩泉)と結びついて独自の美肌祈願文化へと発展した経緯があります。