騒動の渦中、SNS上では「なぜ国は米不足を放置するのか」「倉庫に眠る100万トンの備蓄米を今すぐ市場に出すべきだ」という厳しい批判が殺到しました。しかし、農林水産省が政府備蓄米の放出に慎重姿勢を崩さなかった背景には、法的な制度設計と市場構造に関わる明確な理由が存在していました。
そもそも政府備蓄米の法的な放出基準は、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律において「不作による大幅な供給不足が生じた場合」や「連続する凶作が発生した場合」に限定されています。農水省の需給動向調査では年間を通じた絶対量は足りており、8月下旬から9月にかけては早期栽培米や東北・北陸の「新米流通時期」が目前に迫っていました。
もしあの段階で安易に数十万トンの備蓄米を市場へ放出すれば、直後に収穫を迎える全国の米農家が丹精込めて育てた新米の価格が暴落し、資材高や燃料高に苦しむ生産現場へ壊滅的な打撃を与える危険性がありました。流通関係者の証言によると、「店頭に米がないのは卸売業者と小売店をつなぐ物流のキャパシティと発注制限が主因であり、米そのものが国から消滅したわけではなかった」と語られています。