「自分の子供だからという理由で会社を継がせることは絶対にない」——柳井正氏はかつて、幾度となくそう言い切ってきた。この苛烈なまでの経営哲学こそが、株式会社ファーストリテイリングを山口県から世界へと飛躍させた最大の原動力である。
親から子へそのまま社長の椅子を手渡す旧来型の同族経営を、正氏は徹底して否定する。実力なき者がトップに立てば、数万人の社員とその家族、そして世界中の顧客を裏切ることになるからだ。自らが築き上げたビジネスモデルに絶対の自信を持つからこそ、経営権の承継に対しては冷徹なまでのリアリズムを貫いている。