店内に踏み込むと、まず目を奪われるのが天井を横切る太い梁だ。歳月を重ねた木肌は飴色に光り、かつてこの家で重ねられた暮らしの記憶を静かに物語る。不揃いなアンティークの椅子、使い込まれた木製テーブル。それぞれが異なる歴史を持ちながらも、この空間で見事な調和を見せている。
設計の妙は、照明の配置にも現れている。照度を抑えた温白色のランプがテーブルの上にだけ小さな光の輪をつくる。周囲の暗がりとコントラストをなすことで、対話する相手の表情や皿の上の料理が鮮明に浮かび上がる。過剰な装飾を排し、建物の素地と光の陰影だけでつくりあげた空間は、どこか修道院のような静謐ささえ漂わせる。