「猫の額」の語源は、江戸時代の庶民文化にまでさかのぼる。猫は体全体に比べて額(毛の生え際から目の上までの狭い部分)が非常に小さく、指で触れても一瞬で終わってしまうほど狭い。この動物的特徴を江戸っ子のユーモア溢れる着眼点で捉えたのが始まりだ。
この俗語が一躍メジャーな文学的表現として定着したきっかけの一つが、文豪・夏目漱石の代表作『吾輩は猫である』だ。作中での洒脱な語り口や猫の視点を通じた社会風刺が広く愛読されたことで、猫にまつわる言い回しが近代の出版業界を経て一気に一般化していった。漱石が描いた洒脱な世界観が、慣用句としての命脈をより強固なものにしたと言える。