三島由紀夫と並び、美輪の美に深く魅了されたのが歌人であり劇作家の寺山修司だ。寺山は美輪という唯一無二のミューズを得たことで、自らの劇団「天井桟敷」の代表作『毛皮のマリー』を生み出した。
寺山と美輪の間にも、激しい感性のぶつかり合いと愛憎半ばする濃厚なドラマが存在した。演劇界の異端児と呼ばれた寺山は、美輪の持つ中性的な魔性と圧倒的な表現力を極限まで引き出そうと執着した。舞台裏での緊密な密着ぶりは、周囲から「恋人同士以上の密月」と目されることもしばしばだった。
演劇界を揺るがしたこの蜜月関係は、日本の舞台演劇史における金字塔を打ち立てる原動力となった。ミューズとしての美輪は、文化人たちの創作意欲を燃え上がらせる「永遠の恋人」だったと言えるだろう。