1990年代初頭、日本の音楽シーンにおいて独自のポジションを築いていた森高千里。彼女が自ら作詞を手掛け、16作目のシングルとして世に送り出したのがシングル『渡良瀬橋』である。当時、所属レーベルのワーナーミュージック・ジャパンからリリースされた本作は、直後に発売されたアルバム『ペパーランド』にも収録され、彼女の表現者としての評価を決定づけた。
誕生の背景には、実に人間味溢れるエピソードが存在する。語感の響きの良さを求めて地図を眺めていた森高が、栃木県足利市を流れる渡良瀬川とそこに架かる橋の名前に目を留めたことがすべての始まりだった。実際に現地を訪れた彼女は、夕日の美しさと街が持つどこか懐かしい佇まいに深く感銘を受けたという。八雲神社や床屋の角といった実在する風景を歌詞に織り込むことで、架空の物語ではなく、誰もが自身の郷愁を重ね合わせられるリアルな情景が吹き込まれた。