本作が単なるロードムービーに留まらない理由は、綿密に張られた伏線とキャラクター造形の深さにある。例えば、失意の底にいる叔父フランクが研究する作家マルセル・プルーストの引用や、飛行士の夢を絶たれた兄ドウェインが抱える色覚異常の伏線など、細部まで計算し尽くされた小道具や会話が後半の感情の爆発へと見事に収束していく。
また、DVDや特典映像などで明かされた未公開シーンや未採用のカットには、一家が旅の途中で繰り広げるさらに深い会話や、クラシックなワーゲンバスの故障をめぐる裏話が含まれている。当初のカット案では、より毒気の強いブラックユーモアが含まれていたが、編集段階で家族の絆に焦点を絞る判断が下された。こうした舞台裏の試行錯誤があったからこそ、時代を超えて愛される奇跡的なバランスが完成したと言えるだろう。