上糸を完璧にセットし直しても改善しない場合、次に向き合うべきは下糸側のセットアップです。現代の家庭用ミシンの主流である水平全回転釜の糸絡まりにおいて、最も頻発しているのがボビンの向きと内釜のセットミスです。
家庭用ミシンの大半では、ボビンを上から見たときに糸が反時計回り(アルファベットの「p」の字)に出る向きで内釜に落とし込む仕様になっています。ここを逆向き(時計回り・「q」の字)に入れてしまうと、糸を引き出す際に適切なブレーキがかからず、ボビンが空転して余剰な糸が釜の隙間に巻き込まれてしまいます。
さらに見落としがちなのが、ボビンを内釜に入れた後、内釜の手前にある「ツメ(板バネの溝)」に糸をしっかり通しているかどうかです。カバーの手前にある溝にカチッと糸を通過させ、余分な糸を糸切りカッターで切断するまでが正規の工程ですが、このバネを素通りしてしまうと、下糸のテンションが完全に喪失します。
また、国内2大メーカーであるブラザーとジャノメでも、下糸周辺の構造に細かな設計思想の差が見られます。
ブラザーミシン下糸トラブル対処法:近年のブラザー製ミシンは「下糸クイック」機能が標準化されており、溝に糸を通すだけで下糸の引き出しが不要なモデルが中心です。しかし、プラスチック製のボビンが純正品(高さ11.5mm)以外(100円ショップの汎用品や他社規格の9.2mmなど)を使用していると、センサー誤作動や釜内部での浮き上がりが発生し、突然の糸噛みを引き起こします。
ジャノメミシン下糸巻き込み:ジャノメの水平釜は糸調子の安定性に定評がある一方、内釜の回り止め部分の遊びが極めて精密です。ボビンをセットする際、内釜の突起が本体側のストッパーに正しく当たっていない状態でフタを閉めると、縫製開始と同時に内釜ごと激しく回転し、下糸巻き込みと同時に内釜を破損させる事故につながります。