武家社会の「衆道」が都市の成熟とともに町人文化へと流出していく中で誕生したのが、陰間茶屋と呼ばれる男性娼楼の存在だ。江戸の芳町や湯島などに立ち並んだ陰間茶屋では、舞台に立つ若衆歌舞伎の役者や見習い少年たちが、客からの指名を受けて夜の相手を務めていた。
この禁断の売色文化と庶民の情欲を活写したのが、元禄期の文豪・井原西鶴である。彼の代表的浮世草子『男色大鑑』には、武士や町人、僧侶たちが男色に命を懸け、時には愛ゆえに刃を交える凄絶なドラマが克明に記録されている。美少年を巡る愛憎、粋と意地。私たちがイメージする淫靡な影の裏には、洗練された都市美学と消費文化の一端が確実に存在していた。